デザインの国イタリアで、見た、考えた
故きを残し、新たな体験を作る
イタリア・トリノでのダイキン新製品発表イベントに招かれた。発表の場は、フィアットの旧工場をリノベーションした巨大複合施設の中にあるフィアット博物館。この施設にはショッピングモールやホテル、シネコンなども入っている。工場そのものを残した外観に対し、レンゾ・ピアノ設計の内部空間は先鋭的なイメージで、鮮やかな対比をなしている。古いものを残しながら新たな体験を生み出すヨーロッパデザインの奥行きの深さを感じずにはおられない。
ミラノのトイレでサプライズ
次に立ち寄ったミラノで、パブリックトイレに入った瞬間、女性用と間違えたと錯覚した。内部が全て個室で、男性専用便器はなく、見かけ上男女の区別がつかない。家庭トイレが男女兼用なのを考えると不思議はないのだが、これは女性が社会の枢要な位置を占めてほぼ男女が同等になったことや、世の中で存在感が増してきたLGBTの影響なのだろう。
シェアオフィス付きのホテル
ミラノでの宿泊は「ノボテルミラノリナーテアエロポルトホテル」。シェアオフィス併設で、バー・レストラン・カフェなどと併せ、ビジネスの活用には絶好だ。しかも宿泊費も1万円前後でリーズナブル。以前ロンドンで泊まった「シチズンMロンドンバンクサイド」もシェアオフィス併設だった。特定のオフィスにとらわれないノマド的な働き方が一般化するにつれ、このスタイルがホテルのニュースタンダードとなり、いずれ日本のホテルもこうなるだろう
好況に転じたミラノのデザイン業界
友人で建築家・デザイナーのマッシモ・イオザ・ギーニ(1959年ボローニャ生まれ。1985年スタジオ・イオザ・ギーニ設立。カッシーナの家具デザインなど。)は、ミラノのデザイン業界が8年間の不況を脱し、好況に転じたと語っていた。投資家が「デザイン」に注目して、デザインファンドなるものもできたそうだ。デザイン会社への投資や買収も始まっているという。デザイン会社こそ真の「価値創造企業」だということに、経営層や投資家たちが気づき始めた結果だろうと考えたい。
デザインでブランディング?
イタリアの今に触れ、イタリアがデザインの国として世界から認められたのは一体何がきっかけだったのか、と改めて思った。かつてパリのブランド品生産地としての地位でしかなかったイタリアだが、今やミラノは世界的なファッション中心地のひとつになっている。さらに「ミラノ・サローネ」は今や世界中のデザイナーの登竜門という様相を呈しているし、カーデザインにおいてもイタリアの名は格別だ。デザイン立国というブランディングを成し遂げたイタリアの成功から、我々も学ぶべき多くのことがあるはずだ。